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インドソフトウェア産業の源

アジアビジネス交流―「マンパワーの展望」 (1/5)

プラカッシュ・ヘルバルカー
プラカッシュ・ヘルバルカー

先日開催されたソフトウェア産業団体NASSCOMの会議で、大変興味深い講演が業界関係者の間に衝撃をもたらした。講演を行ったのは著名なビジネスマンでありテック・マヒンドラ社の会長でもあるアナンダ・マヒンドラ氏である。現在のソフトウェア輸出業界の置かれている立場は、神話上の魔物であるヒランヤカシャップと対決しなければならない守護神ウィシュヌの状況に酷似しているとアナンダ・マヒンドラ氏は言う。ソフトウェア輸出業界は現在3つの大きな課題に直面している。

ひとつは、アメリカ経済の景気減速である。なぜならば、アメリカはインドにとって最大の顧客であり、年30%から40%の割合で急激に増加している最も大きな収入源である。そのため、アメリカ経済の景気減速もしくは後退が起こり、回復が遅れるようであればインドのソフトウェア輸出業界に重大な悪影響を及ぼす懸念がある。次に、インド経済は1950年から1990年にかけての社会主義時代以降、経験したことのないルピー高にある。日本も以前、急激な円高の時期を経験しているが、その時の輸出産業、特に自動車業界はアメリカに製造拠点を移すなどして起死回生を図ったと記憶している。最後に、ソフトウェア輸出業界は適切な技術力のある人材不足に悩まされている。これらの課題を克服するためには、守護神ウィシュヌが魔物ヒランヤカシャップと対決した時のように、ソフトウェア輸出産業も姿形を変える必要があるとアナンダ・マヒンドラ氏は言う。

ソフトウェア輸出業界が拠点を置く主要都市での人材不足に対してソフトウェア輸出業界は過去に対策を講じたこともある。以前は、優秀な人材はインド全国からムンバイ、デリー、チェンナイ、バンガロールといった主要都市に集められてきた。しかしインドには28もの州がありそれぞれに異なった言語や文化を持っている。1947年の独立後に実施された言語グループを基準にした州の再編成により、統一言語、統一文化を持つ諸外国の国々と比較して人々の生活基盤の移動が困難になってきたことにより各主要都市に人材を集めることが容易ではなくなった。そこでソフトウェア輸出業界は30%の成長率の維持と収益の増収を図るため主要都市から都市群へと拠点を移動させた。選ばれた都市はハイデラバードとプネであった。この2つの都市は人口に関してはバンガルールより少ない。しかしこの5年間でソフトウェアとIT関連サービスが目覚ましい発展と成長をおさめている。

またソフトウェア輸出業界は新たな動きを見せ始めている。それは過去に主要都市から都市群へ拠点を移動したように今度は「レベル2都市」へ移動を始めている。

「レベル2都市」の中でもナグプール、チャンディーガル、マイソール、コインバトールやコルカタである。コルカタ(旧カルカッタ)は主要都市であるにもかかわらず「レベル2都市」に分類されている。なぜならば1960年から1990年の共産主義政府がコルカタから産業全体を締め出す政策をとったために多くの製造業者がこの地を離れたからである。

現在は州政府も変わり政策全体が緩和されて来ている。

ではなぜこれら「レベル2都市」に企業は拠点を移動させているのか、それは「レベル2都市」には人材が豊富にあるからである。人材が豊富な理由は、これらの都市は、物価が安く、高度な教育機関が数多く存在するため、生活費の高い都市部よりも住みやすいからである。企業にとっても人件費の高い都市部で少ない人材を探すより、多くのメリットが存在するのである。

「レベル2都市」における生活費の安さは、不動産物件価格の違いがあげられる。一般にインド全体の中流階級層は収入の約半分を住宅費に充てる傾向がある。そのため主要都市部での高い住宅費は大きな負担である。しかし「レベル2都市」でのアパートやコンドミニアムの購入価格は主要都市の約半分である。もうひとつは交通移動費の違いである。

「レベル2都市」での交通移動費は主要都市の1/3から1/4ですむのである。一見便利な公共の交通設備がある主要都市の方が安いように思えるが、ソフトウェア技術を学ぶ人々はすぐにバイクや車を所有し使用するためこれらの維持費もまた負担になる要因のひとつである。

「レベル2都市」に多くのソフトウェア企業やITサービス企業が進出している背景の一つには高度な教育機関が複数存在することも関係する。ナグプールには工学大学が10校あり、科学大学が12校ある。チャンディガールには工学大学が6校あり、科学大学が12校ある。それらの高度な教育機関は基礎言語スキルとグローバルな視点を育てるために、英語での教育を充実させている。ITES産業のモットーである「人間性や生活態度を基準に人を採用し、技術は我々の教育で身につける」を基に多くの企業がそれぞれのトレーニングスクールなどを、マイソールやトリバンドラムなど多くの「レベル2都市」に設置し始めている。

また「レベル2都市」は地理的交通機関にも多くのメリットを持っている。ナグプールには航空会社が7社あり、1日34便が離発着し国際線は週に18便ある。チャンディガールもまた、1日8便がある。道路事情に関してもナグプールは東西に延びる国道(NH6)と南北に延びる国道(NH7)の合流地点であり、鉄道に関しても同様に東西と南北の合流地点である。

チャンディガールからデリーまでは車で約3時間である。

インドでは他にも多くの都市(ルディアーナ、ラクナウ、グワハティ、ブバネスワル、ジャイプール、アーマダバード、スラト、インドーレ、ゴア、マイソール、コインバトール、コチ、ビジャヤワーダ、マンガロール、トリバンドラム、バロダ)が、ソフトウェア産業の誘致に名乗りを上げている。

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